湿原が目の前に。写真家が営む宿「シャレー志賀」で出会う、志賀高原の自然時間【シャレー志賀】

湿原が目の前に。写真家が営む宿「シャレー志賀」で出会う、志賀高原の自然時間【シャレー志賀】

志賀高原一の瀬の道沿いに立つ「シャレー志賀」。標高1,600mのホテルのすぐそばを川が流れ、少し歩けば湿原や白樺、季節の花々に出会えます。冬はスキーの拠点として知られる一の瀬ですが、夏や秋には、山の空気を吸いながら歩き、撮り、静かに休むグリーンシーズンの魅力があります。

シャレー志賀を営む佐藤秀信さんは、自身もスキー写真を撮る写真家です。撮影に訪れる人のために、充電設備や写真集ライブラリーを備えた「志賀高原フォトグラファーズセンター」を整え、一の瀬を”撮る旅”の拠点としても開いてきました。

「山に入って、人間の素を取り戻して帰ってもらえるのが一番嬉しくて」

そう語る佐藤さんに、シャレー志賀のこと、ホテルの目の前に広がる一の瀬の自然、写真家として見つめてきた志賀高原の魅力、そして宿として大切にしている静かな時間について聞きました。


ホテルの目の前に湿原がある。一の瀬でシャレー志賀に泊まる魅力

川、湿原、白樺がすぐそばにある高原ホテル

志賀高原一の瀬エリアに足を踏み入れると、道路沿いにホテルが並び、その脇をすぐに川が流れているのに気づきます。上信越高原国立公園の中に位置するこのエリアは、志賀高原のほぼ中央にあたり、山岳リゾートの拠点として施設が集まる場所です。

シャレー志賀は、その一の瀬の道沿いに立つ高原ホテルです。標高1,600mという立地でありながら、ホテルのすぐそばに湿原が広がっているのが、この宿ならではの特徴です。

「ホテルの目の前にこれだけ湿原があるっていうのが、結構強みではありますね」

と佐藤さんは言います。志賀高原には湿原もホテルも点在していますが、多くの場合は場所が分かれています。シャレー志賀のように、宿泊しながら歩いてすぐ湿原に出られるロケーションは、それほど多くはありません。

湿原では、6月下旬から8月にかけてモウセンゴケをはじめとする湿性植物や季節の花々が見られます。規模は大きくはないものの、高層湿原として貴重な植生が残っており、白樺の林とあわせて、散策や撮影を楽しむ人の姿もあります。佐藤さんは「だいぶ乾燥化が進んできた」と言いながらも、これだけの湿原が宿の目の前にあることを、一の瀬ならではの魅力として大切にしています。

志賀高原というとスキーのイメージが強いかもしれませんが、夏や秋のグリーンシーズンには、湿原を歩き、山の空気を吸い、静かに過ごすという別の顔があります。シャレー志賀は、そのグリーンシーズンの滞在拠点としても機能している宿です。


写真家が営む宿。「志賀高原フォトグラファーズセンター」を始めた理由

夏や秋の志賀高原には、写真を撮りに来る人がいる

志賀高原には、写真愛好家の間でよく知られた撮影スポットがいくつもあります。夏や秋のグリーンシーズンには、カメラを持った人たちが各地を訪れます。

ただ、佐藤さんが気になっていたのは、そうした人たちが「撮影の合間に休める場所がない」という現実でした。

「志賀高原は、写真を撮る人が秋とか夏場、グリーンシーズンに多くてですね。ただやっぱりグリーンシーズン、滞在するホテルが少ないっていうことがあって、困ってらっしゃる方も多いので、そういう方を全部取り込んじゃいたいなというところがあって」

「写真を撮ってても、お茶飲むところもないし、充電するところもないし」

そこで佐藤さんが整えたのが、「志賀高原フォトグラファーズセンター」です。フォトコワーキングスペース、フォトグラファーズルーム、ギャラリーを備えた施設として、充電設備や写真集ライブラリーを用意し、撮影の合間に立ち寄れる場所をつくりました。館内では写真展の開催や、佐藤さん自身による撮影講座・編集講座も行われています。疲れたら休んでお茶を飲み、また撮りに出かける。そういう拠点として、シャレー志賀を開いてきました。

写真を撮る人のための場所でありながら、それは同時に、志賀高原のグリーンシーズンをゆっくり過ごすための提案でもあります。カメラを持っていなくても、湿原を歩いて戻り、静かな空間でお茶を飲む時間は、この宿ならではの過ごし方の一つです。


父のカメラから、雪山の一枚へ。佐藤さんが写真家になるまで

小学生の頃から「写真ってかっこいい」と思っていた

佐藤さんが写真に惹かれたのは、子どもの頃のことです。

「小学校の時から、写真かっこいいなって思っていて。親父がカメラをやっていたので、俺も撮ってみようっていうのが始まり」

父親のカメラを手にするようになったのは中学生の頃。その後、中学・高校では絵を描くことに打ち込み、大学では美術学部で油彩を専攻しました。スキーを本格的に始めたのは高校に入ってからで、大学卒業後はオーストラリアでスキーインストラクターとして2年間を過ごしました。

帰国後はシャレー志賀の運営に携わりながら、写真への関心を持ち続けました。本格的にプロを目指すようになったのは15年ほど前のこと。スキー写真家の水谷章人氏が主催する講座に5年間通い、その後弟子入りして修行を積みました。

厳しい審査を経て、佐藤さんはプロの写真家として活動するようになりました。現在は公益社団法人日本写真家協会、公益社団法人日本写真協会、一般社団法人日本スポーツ写真協会の会員として活動しています。写真集や作品はシャレー志賀の公式オンラインショップでも購入できます。

油彩で培った色や構図への感覚、スキーで培った雪山への親しみ。それぞれが、今の佐藤さんの写真の目線につながっているように見えます。


スキー写真は一発勝負。佐藤さんのまなざしが宿に宿る

雪煙、ターン、光。偶然ではなく、設計して撮る

佐藤さんが撮るスキー写真は、スキーヤーが滑っている瞬間をただ切り取るものではありません。どこでターンするか、どこで雪煙を上げるか、光と影がどう変わるか。一枚の写真に向けて、場所と動きを事前に設計します。

「ここに入ってもらって、ターンの大きさはこうだと。雪煙はここで上げろみたいな」

しかし、自然の中での撮影は思い通りにはいきません。スキーヤーが一度滑ると、雪面にシュプールが残ります。

失敗すれば、また別の場所を探すしかありません。リフトのない斜面では、撮影者もスキーヤーも登り直しです。光や影も時間とともに変わるため、同じ条件は二度と戻りません。

「一発に賭ける」という言葉が自然に出てくるほど、一枚への集中がある。そのまなざしは、宿のすぐ前に広がる湿原や、季節ごとに変わる一の瀬の光にも向けられているように感じます。館内には佐藤さんをはじめ、さまざまな写真家の作品が展示されており、宿に泊まりながら写真の世界に触れることもできます。

佐藤さん撮影

「山に入ると、人は元気を取り戻す」シャレー志賀が大切にする滞在

林間学校の子どもたちが、山で変わっていく

シャレー志賀では、林間学校の受け入れも行っています。都市部から来た子どもたちが、2〜3泊の間、山の中を歩いて過ごす。その変化を、佐藤さんは長年見てきました。

「来る前は都会の子たちが疲れて、若いのに機嫌悪そうに来るんですけど、山の中を歩いてるとワイルドになって帰る」

最初は表情が固く、どこか疲れた様子で到着した子どもたちが、山を歩き、自然の中で時間を過ごすうちに、だんだんと顔つきが変わっていく。そのことに、佐藤さんは志賀高原の自然の力を感じています。

「山に入って、人間の素を取り戻して帰ってもらえるのが一番嬉しくて」

子どもたちに限らず、家族連れで訪れた大人も同様だと言います。チェックイン時には疲れた様子だったお客さんが、チェックアウトの際には「ご飯美味しかった」「いいとこだった」と言って帰っていく。その変化が、佐藤さんにとって宿を続ける理由の一つになっています。

「森林セラピー」や「フィトンチッド」といった言葉は知りながらも、佐藤さんが大切にしているのはもっとシンプルなことです。美味しいものを食べてもらい、できるだけ静かな空間で居心地のいい時間を過ごしてもらう。そのための手助けをすることが、宿としての役割だと考えています。

志賀高原の針葉樹林が多いエリアを歩くと、松ヤニのような香りとともに、なんとなく元気が出てくる感覚があると佐藤さんは言います。部屋の中にいるだけでなく、外を歩くことで得られるものがある。それが一の瀬で過ごす時間の、ひとつの核心かもしれません。


旅の記憶に残るのは、食事と地元の人との会話

公式ホームページより

田舎のヨーロッパを思わせる、手作り感のある料理

自然がいくら素晴らしくても、旅の満足度を左右するのは食事と人との出会いだと佐藤さんは言います。

「旅行って何が楽しいかって、やっぱり食事とね、地元の人と話すとか」

シャレー志賀の料理は、板前に任せながらも、宿の雰囲気に合う方向性を大切にしています。洋風の建物の佇まいに合わせ、手作り感のある料理を意識しています。

「ちょっと田舎のヨーロッパのイメージでとか、そういうのはありますね」

人気メニューの一つとして佐藤さんが紹介してくれたのが、リンゴを丸ごと使ったグラタンです。

「リンゴをたくさん仕入れて、中くり抜いて、リンゴの丸ごと使ったグラタンなんです。リンゴが蓋になってくり抜いて、使ったリンゴを少し混ぜながらグラタン」

リンゴをくり抜き、その中にグラタンを詰め、蓋のようにリンゴを重ねた一皿。山の宿らしい温かさと、少し洋風なシャレー志賀の雰囲気をよく表しています。現在の板前さんとは5〜6年の付き合いになり、宿のイメージに近い料理の流れができてきたと言います。

自然はすでに整っている。だからこそ、ホテルとしてできることを精一杯やりたい。そういう思いが、食事へのこだわりの背景にあります。


静かな時間を守る宿であるために

みんなが心地よく過ごすための、終わらない課題

シャレー志賀が大切にしていることの一つに、静かな空間があります。ただ、それを守ることは、宿として簡単ではないと佐藤さんは正直に話してくれました。

「静かな空間を作りたいんですけど、どうやってみんなが居心地良くなれるかっていうのが今の課題です」

できるだけ多くの人に気持ちよく過ごしてもらいたいからこそ、ときには声をかけなければならない場面もある。その線引きや伝え方に、今も悩んでいると言います。

「静かに過ごしたい」という人にとっては、この宿の空気は安心材料になるはずです。完成した宿ではなく、宿主が考え続けている宿。それがシャレー志賀の誠実さの一面です。


写真を撮る人にも、ただ休みたい人にも。シャレー志賀で出会う一の瀬時間

冬のスキー、夏秋の湿原散策。季節ごとに違う一の瀬へ

シャレー志賀は、冬のスノーリゾートとしても、夏・秋のグリーンシーズンの滞在拠点としても楽しめる宿です。

冬は一の瀬スキー場をはじめとする志賀高原の広大なゲレンデへのアクセスが近く、スキーを楽しむ人のベースキャンプになります。200台収納可能なスキーロッカー、大浴場・サウナ、レンタルショップなど、スキーヤーに必要な設備も整っています。

夏や秋には、湿原の散策、白樺林の中のトレッキング、志賀高原の撮影スポットめぐりなど、山の時間をゆっくり楽しむ旅になります。本格的な登山を目指す人よりも、夫婦や家族連れで「お弁当を持って歩いて、午後には戻ってくる」くらいのハイキングを楽しみたい人に向いているエリアだと佐藤さんは言います。一の瀬周辺には初心者や家族連れでも歩きやすいトレッキングコースもあり、無理なく山を楽しみ、宿に戻って食事をして、静かに休む。そういうリズムの旅が、一の瀬には似合っています。

写真を撮る人には、志賀高原の自然を見つめる旅になります。ただ休みたい人には、都市生活で張りつめていたものを少しほどく時間になります。どちらの旅にも、シャレー志賀は静かに寄り添います。

シャレー志賀で出会うのは、宿だけではありません。目の前に広がる湿原、季節ごとの光、山を歩いたあとの食事、そして一の瀬を見つめ続けてきた人のまなざし。志賀高原一の瀬で、少しだけ自分を取り戻す時間に出会いたい。そんな旅の入口に、シャレー志賀はあります。

公式ホームページより

シャレー志賀 施設情報

項目内容
所在地〒381-0401 長野県下高井郡山ノ内町 志賀高原一の瀬
電話0269-34-2235
チェックイン13:00(22:00以降の場合は事前連絡要)
チェックアウト10:00
館内施設大浴場、サウナ、大広間、ビアバー、レンタルショップ、スキーロッカー(200台収納可能)、コインランドリー、自動販売機、宅配便(ヤマト運輸)、全館Wi-Fi無料
公式サイトhttps://chalet-shiga.com/
フォトグラファーズセンターhttps://spc.chalet-shiga.com/
公式オンラインショップhttps://chaletshiga.official.ec/