宿に“名物”があると、その旅は少し特別になります。
景色や雪質だけでなく、あれを食べに行きたいという理由がひとつ増えるからです。
志賀高原・一の瀬で、その代表格のひとつがチューホテル。
この宿には、常連が毎年楽しみにしている名物があります。
それが、八丁味噌を使った「チュー鍋」です。
冬季営業が中心のこの宿は、館歴およそ38年。
2代目のもいちろうさんが地元に戻ってきてから、宿はまた独自の魅力を深めてきました。
客室は約30部屋。
ロビーや食堂には薪ストーブがあり、どこか肩の力が抜けるような空気が流れています。
きっちりしすぎず、でもちゃんと居心地がいい。
チューホテルには、そんな“ゆるい感じ”の心地よさがあります。
鍋を食べに来る人がいる宿は、やっぱり強い
チューホテルのいちばんの魅力は、やはり鍋です。
なかでも名物のチュー鍋は、この宿を象徴する存在。
八丁味噌を使った寄せ鍋で、ここでしか味わえない個性があります。
鍋はチュー鍋だけではなく、
水餃子鍋、ボルシチ鍋、寄せ鍋の4パターン。
その日の気分や滞在の楽しみ方に合わせて選べるのも、この宿らしいところです。
しかも印象的なのは、鍋を目当てに来る常連がいるということ。
宿の料理が、宿泊の動機になる。
これは簡単なことではありません。
食事が強い宿は、記憶に残ります。
チューホテルはまさに、食べる楽しみが宿の魅力そのものになっている宿です。
薪ストーブのぬくもりが似合う、自然体の空間
チューホテルの館内には、どこか手づくりのような、自然に育ってきた空気があります。
ロビーや食堂には薪ストーブ。
内装も、最初からすべてを設計しきったというより、宿の時間の中で自然と形づくられてきたような雰囲気です。
たとえば、ブランコのような遊び心のある要素にもお客様の反応があるそうで、そうした空間の自由さもこの宿の魅力です。
整いすぎた高級感ではなく、思わず長居したくなるあたたかさ。
冬の高原では、こういう居場所がとてもありがたいものです。
雪の一日を過ごしたあと、薪ストーブのあるロビーに戻る。
それだけで、なんだか旅が豊かになります。
チューホテルは、その感覚をちゃんと知っている宿です。
海外からも、日本からも。幅広い人に愛される理由
チューホテルには、国内外からさまざまなお客様が訪れます。
インバウンドでは、オーストラリアや台湾からのお客様が中心傾向とのこと。
ニセコや白馬から流れてくる流れもあるそうで、志賀高原の魅力が少しずつ広く届いていることを感じさせます。
一方で、日本人のお客様では、熟年夫婦や定年後の世代、年末年始にはファミリー層も多いそうです。
つまりこの宿は、特定の層に偏りすぎず、それぞれのペースで過ごしたい人に合う宿なのだと思います。
にぎやかすぎず、閉じすぎず、食事にはちゃんと楽しみがある。
そのバランスが、国籍や世代を越えて支持される理由なのかもしれません。
宿主の暮らしそのものが、志賀高原とつながっている
もいちろうさんの話で印象的なのは、宿の外での活動も含めて、志賀高原という土地と深くつながっていることです。
稲作、岩魚釣り、漁協理事、山菜採り、山岳救助。
こうした言葉が並ぶだけでも、この宿が単に観光のための拠点ではなく、山の暮らしの延長にある宿だとわかります。
以前は山菜を提供していたこともあるそうで、その土地に暮らしている人ならではの感覚が、食や会話にもにじんでいるのでしょう。
こういう宿では、施設の豪華さとは違う説得力があります。
“この場所を知っている人がやっている宿”であること。
それが、滞在の安心感にもつながります。
オリンピックの記憶と、今見えている課題
長野オリンピックは、多くの人にとって地域の大きな節目でした。
チューホテルでも、準備期間にはコースづくりに関わり、ピンバッジ交換のような思い出も残っているそうです。
一方で、道路規制や入場規制などの影響もあり、宿の営業面では客が減った印象もあったとのこと。
大きなイベントが、必ずしもすべての宿に追い風とは限らない。
そのリアルなお話も、この土地の歴史として興味深いものです。
現在の課題としては、やはり夏の一ノ瀬の難しさがあります。
アクティビティのキャパシティ不足もあり、冬ほどの魅力を打ち出しにくい。
それでも、標高1600mの涼しさ、紅葉、高地トレーニング環境など、この場所ならではの強みは確かにあります。
今後どう活かしていくかも、楽しみなところです。
志賀高原は宝物。だからこそ、残したい
もいちろうさんのメッセージは、とてもまっすぐです。
志賀高原は宝物。できるところまで続け、スキーヤーのために残したい。
この言葉に、チューホテルのすべてがよく表れています。
名物鍋があって、薪ストーブがあって、気負わず過ごせる。
それでいて、この場所を大切に守りたいという芯がある。
だからこの宿は、ただ“面白い宿”ではなく、また来たくなるのだと思います。
志賀高原・一の瀬で、少し力を抜いて、でもちゃんと満足できる宿を探しているなら。
チューホテルは、かなり気になる一軒です。
